鎖骨を噛む





私は不覚にも顔を紅潮させてしまった。



まさかそんなことを堂々と言えるなんて、言われるなんて……。



なんてカッコイイのかしら! まるでお姫様みたいじゃないの、私。



でも、それを全面に出してしまうと、ダメ。恥ずかしい。だって、あんなに主導権を握っていたつもりでいたのに、それが逆転してしまいそうで、懐かなかった猫がある日を境に懐いちゃうみたいな……そんなのは嫌だ!



嫌だけど……もういっそのことそうなってしまった方が楽なんだと思うのはホント。自分に正直に生きてる方がきっと幸せなんだ。その欲望の海にドボンッ! ダイブしてしまった方が心地良いに決まってる。照り付ける太陽が眩しくて、浮き輪でプカプカと浮くのもいい。どこに流されるのか、行くも帰るも波任せ、風任せ。そんな自由な生き方をしたい。



フリーターは、何にも縛られない。バイトも辞めたきゃいつでも辞められる。フリーは自由って意味だ。でもそれは、表面上の自由であって、真の意味での自由は、心のことを言うんだと思う。心のフリーターになりたい。どんなに忙しくても、心は誰にも支配されることなく、自分の思ったままに発言して、思った通りに行動して、好きなものを食べて、好きな人と好きなことをして笑っていたい。そんな生活をしたい。



好きな人と……健司と……。




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