鎖骨を噛む





「……わかったわ。」



私は机の上に置かれた100均で買ったカッターの刃をぎりっ、ぎりっ、ぎりっ、と出した。そして、それを彼に向けた。



「……殺す気か?」



「そうじゃない。」



私は彼の胸にカッターの刃を当てがった。



「っ!!」



彼は顔を背けた。私はかまわずに、彼の胸にカッターを力強く当てた。



ザクッ、ザクッ、ザクッ……赤い、赤い、ロープが解けていく。赤い糸だと思っていたものが、実は束縛をするためのただの赤いロープに過ぎなかったことにやっと気づいた。赤い糸というものは、見えないもので、見えてしまったらそれはもう、赤い糸なんかじゃない。



「信じてあげる。あなたを。だから、あなたも私を信じて欲しい……独りに……。」



独りに……。




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