鎖骨を噛む
「ああ、わかった。」
彼は縛られていた腕で私を強く抱いてくれた。誰かにこうされることを、人の温もりを感じることを私はずっと求めていたんだと思う。なぜか涙が溢れ出てきて、止まらなかった。
「な、なんで泣いてんだろ、私……。」
「きっと氷のように冷え切ってきた心が溶けて、水になっただけだよ。」
「じゃあ、私、びしょ濡れだね……。」
「それでもいい。僕がりささん……いや、りさが独りじゃないってことを証明していくから。だから、りさも僕のことを独りじゃないって証明してほしい。」
「……うん……うん! わがっだ。」
彼の胸の中はすっごく温かくて、涙で染みたシャツが熱くなっていく。簡単なことだったんだ。こうやって心を開けば孤独なんて感じなくてよかったんだ。私はもう独りじゃない。健司がいる。ここに、確かに。