世子様に見初められて~十年越しの恋慕
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「盲点だったな」
「はい、世子様」
ヘスの視線の先には、小さな島へと向かう船を捉えていた。
領議政とその側近らを徹底的に探りを入れたところ、陽が沈む頃になると船が沖へと出航し、陽が昇る頃に再び沖へと戻って来る船を見つけたのだ。
そこで、商船に成りすました船で島へと近づくと、微かに鍛錬しているような気合を入れる声が聞こえて来たという。
一見兵士とは思えぬ格好の男が大勢船に乗り込み、無人島とも思える小さな島に向かう。
国で管理している部署で確認したところ、地図にも記載が無いほどの島だという事が分かった。
罪人を隔離する為の島は複数あるが、その規模にも及ばぬほどの小さな島に目を付けたとは。
さすが領議政である。
「世子様、どうなさいますか?」
「父上の具合も心配だ。無い事を祈るが、領相が絡んでいるやもしれぬ。気づかれぬように隠密で調べよ」
「承知しました」
「それと、ヒョク」
「はい、世子様」
「領相が頻繁に会集していると言ったな」
「はい、世子様」
「今宵も集まってるやもしれぬ」
「では……」
「うむ、案内せよ」
「はい、世子様」
朝廷の重臣らが集まることはよくある。
派閥争いが激化している中、どの派閥でも権力欲しさに悪事を目論んでいる事も。
ただそれが、王の座を狙うものだとすれば、到底見過ごす事は出来ない。
ヘスとその護衛数名は、陽が沈みゆく空を背にして王宮のある漢陽へと馬を走らせた。