世子様に見初められて~十年越しの恋慕


実はヘスも木札の暗号は解明済みであった。
木札に書かれていたのは太極八卦図であり、それは帝王を表している。
すなわち、国王である康宗を示していると解くことまでは出来たのだが。
木札の暗号が何に関係しているのかが分からなかった。

両班の娘がそれを突き止め、更には王の体調不良を言い当てたのだから驚きを隠せない。
心の底から無い事を祈ってはいたが、まさか本当に関係があると言うのか?

ヘスは震える拳を壁に打ち付けたい衝動をぐっと堪え、深呼吸した。

「どういう事か、説明してくれぬか」

王命を賜った一臣下であるが、実の父親でもある国王の事柄ゆえ、怒り心頭で取り乱してしまいそうである。
けれど、取り乱した所で今すぐ解決出来る訳ではない。

体調不良になった原因とその解決策を見出し、更にはその元凶を自分の手で絶たねば。
ヘスは気を落ち着かせ、ソウォンを見据えた。

「詳しく調べてみない事には断言出来ませんが、恐らく中毒症状によるものです」
「中毒?…………では、何らかの毒によると申すか」
「いいえ、毒ではありません」
「どういう事だ?」
「体に良いという物でも、取り続けることで毒にも成り得るという事です」
「なるほど、消渇(ソガル:糖尿病)のようなものか」
「…………はい」

誰かが聞いているやもしれない。
部屋の外を通り過ぎた者の耳に入るかもしれないと念には念を入れ、ソウォンは慎重を期す。

怒りに満ちた表情のヘスに、ソウォンは再び背伸びした。


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