世子様に見初められて~十年越しの恋慕
指で擦ったくらいでは剥がれそうにない。
ソウォンは白湯を含ませた手巾を当て、紙端をそっと湿らせると。
思った通り、乾き始めると重なった部分が剥がれ始めた。
丁寧に剥がすと、中に別の紙が隠されていた。
中の紙を取り出してみても、何も書かれていない。
ただ単に重ねているだけなのかとため息を吐いた、その時。
紙に触れた指先に違和感を覚えた。
「何かある……」
ソウォンは目を瞑って指先の感覚を頼りに指を滑らせると。
「何か書かれてるみたいね」
何かで押し当てたような、わざと凹ませたかのような。
「文字ではなさそうね。……文になってる感じはしない…」
紙の所々が凹んではいるが、大半の部分は凹んでおらず。
紙の四方部分、四隅ではなく、各辺の中央らしき部分に何か書かれているようだ。
それと、ほぼ中央部分にも何かが書かれているのか、ぼこぼことした凹凸を感じる。
ソウォンは砂糖がまぶされている茶菓子から砂糖を空いてる湯飲みに削ぎ落とし、そこに白湯を垂らして水飴のようなものを作った。
それをコチ(小さい簪)の先につけ、凹んでる部分に落とし込む。
完全に固まる前に頬紅の粉をふるい落し、紙の裏から軽く叩いて余分な粉を払い落とす。
すると、絵のようなものが浮かび上がった。
「これは木?……こっちは火かしら?」
ソウォンは違う紙に書き出す。
どこが上下左右なのかも分からない。
紙を回転させて、何か手がかりが無いか隈なく調べる。
凹んだ部分を全て浮かび上がらせ、それを別の紙に書き出して気付く。
「これって、王宮の地図?」
地図らしい地図ではない。
四方と中央にしか絵柄はなく、それ以外は全て余白。
だからこそ、分かることもある。