世子様に見初められて~十年越しの恋慕


「王様、神聖な朝議の場に女人を入れるなどもっての外です」
「そうだそうだ!」
「女が入れる場所では無いぞ」

四方から罵声が浴びせられる。
そんな中、娘は静かに跪き、拝礼する。

「拝謁致します」
「顔を上げよ」
「恐れ入ります」

尚膳に連れられ現れたのはソウォンである。
美しい所作で拝礼したソウォンは、ゆっくりと顔を上げた。
緊張しながら真っ直ぐ王を見据えると、王は小さく頷く。

「大提学の娘、ソウォンにございます」
「うむ。頼んだ件について、調べはついたか?」
「はい、王様」
「王様、何事でしょうか」

王の『頼んだ件』の言葉に、領議政の顔が強張った。

「この者には、三十年程前に亡くなった余の妹の公主の書を解読するよう依頼したのだ」

領議政は初めて目にする書簡に驚愕する。

「包み隠さず申せ」
「承知致しました」

ソウォンはその場にいる大勢の視線が突き刺さる中、ゆっくりと口を開く。

「この書簡には詩のような暗号が記されております。日の出に有明月、薄暮に九節飯、髪に菊の簪、紅梅と天の川、白磁を愛でる、蜂の巣探索、月の満ち欠け、足並み揃えし、無二の友」

ソウォンが暗号解読した文を読み上げると、一瞬で静寂に包まれた。

「八卦文字で書かれており、それを解読した文です。そして、その暗号の通りに公主様の殿閣を調べた所、とある場所へと辿り着きました」

ソウォンは書簡を尚膳に手渡し、預けておいた白い紙を受け取る。

「暗号に書かれていた場所は香遠亭。更に暗号が示す場所を捜索した所、この紙が隠されておりました。これは王宮の建物が暗号化されており、これを解読すると、この勤政殿を示しております」

ソウォンの言葉に重臣らが一斉に辺りを見回した。


< 210 / 230 >

この作品をシェア

pagetop