世子様に見初められて~十年越しの恋慕
「王様」
「申してみよ」
ソウォンは生唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「王様、恐れ入ります。その玉座を暫しお借りしても宜しいでしょうか?」
ソウォンの突拍子もない言葉にその場の空気が凍りつく。
王命を賜っているとはいえ、さすがに玉座を拝借するなど、もってのほか。
その場にいる誰もが呆れ返ったかの表情でソウォンを一瞥する。
「無礼者!玉座を借りるなどと一体何を考えているのだ!謀反の罪に問わねばならん!」
「そうだそうだ」
「玉座を狙うなど、この場で斬首の刑に処すべきです」
重臣らが怒号を浴びせる中、ヘスもさすがに庇いきれぬと心配になり、慌てふためく。
「王様、公主様の残された暗号はまだ続きがあります。どうか、最後まで解読させて下さい」
ソウォンは王に懇願し、頭を床につけた。
そんなソウォンを目にしたヘスは、王の方へと向き直り、頭を下げる。
「王様、私からもお願い致します。この者は、決して謀反などを企てるような者ではありませぬ」
「世子様。ご自身が目をかける娘だからと、さすがにこれは見過ごせませぬな」
ソウォンとの関係を知ってて、領議政はあえてそれを持ち出して来た。
そんな言葉に動揺し、ソウォンの手が震える。
「根拠があるのだな?」
「はい、王様」
「何も明かせぬ時は、そなたの命をもって償って貰うぞ?」
「覚悟は出来ております」
「よかろう。そなたに任せる」
ソウォンの返答にさすがのヘスも不安の色を滲ませる。
信じている。
大丈夫だと心で念じるも、やはり心配で堪らない。
見守るだけしか出来ない自分が不甲斐なくて、ヘスは焦りが見え始めた。
王は腰を上げる。
ソウォンは心配そうに見つめるヘスに頷いて見せる。
私は大丈夫だと。
ゆっくり立ち上がったソウォンは、震え気味の足で玉座へと向かった。