世子様に見初められて~十年越しの恋慕


そっと握られた指先。
触れたその部分は、ソウォンの体温より冷たく感じた。

「ごめんなさい。………私の勘違いみたいだわ」

ソウォンはすぐさま真摯に謝罪した。
ソウォンの言葉に男は静かに手を離すと、深々と頭を下げるソウォン。

「本当にごめんなさない」
「分かってもらえたのな………ら……」

男の声音が柔らかいものだと感じたソウォンはゆっくりと顔を上げると。

「ッ?!」
「おいっ、これをどこで手に入れたっ!?」
「……へ?」
「これをどこで手に入れたのかと聞いているのだ!!」

強く右肩を掴まれ、もう片方の手がソウォンの胸元に。

それは、十年前に見ず知らずの少年に突然手渡されたトルパンジ。
そのトルパンジに描かれている紋様が特別なものとあって、決して無くさぬように肌身離さず大切に胸元に潜めて来た。
けれど、目の前の男に襲われたかと勘違いして、自分の身を確認する為、咄嗟に胸元を覗いたのだ。
その時に襟元が広がり、更には深々とお辞儀した事で首に掛けているトルパンジがうっかり出て来てしまったようだ。

「これは………」

男の気迫のこもった視線に、思わず言葉を濁した。
ソウォンはトルパンジの紋様を見られてしまったことに焦り、無意識に視線が泳ぐ。

例え、由緒ある両班の家庭で育った娘であっても、軽々しく身に着けられるようなようなものではない。
それゆえ、何て言って誤魔化せばよいのか困惑した。

すると、


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