世子様に見初められて~十年越しの恋慕
ソウォンは世子から一歩下がり、再び深々とお辞儀した。
「世子様、あの時のご無礼をどうかお許し下さいませ。尊いお体に手を上げるなど、言語道断。世子様の仰ってた通り、極刑に値します。………弁解の余地もございません」
ソウォンは覚悟していた。
この場で斬られても仕方ないと、この十年間、ずっと心に思っていた。
目を閉じそよ風を感じ、雲雀の心地よいさえずりに耳を傾けていると、再び白檀の香りが鼻腔を掠めた。
「そなたに会いたかった」
「ッ?!」
お辞儀をする為、臍の前で自然に合わせていた両手がひんやりとしたものに包まれたかと思った次の瞬間。
ソウォンの体はぐっと引き寄せられ軽い衝撃を受けた。
そして、白檀の香りを纏う大きな腕に包まれていた。
生まれて初めて男の人に抱き締められ、ソウォンは動揺を隠しきれない。
「世子様っ………どうか、どうかお放し下さいませ………」
世子の灰色の長衣にソウォンの白粉が移る。
紅まで移ってしまってはいけないと思い、慌てて離れようと身じろぐと、更に強い力で抱き締められた。
ますます早鐘を打つ心臓がうるさくて仕方ない。
全身で脈を打っているかのように感じられた。
その音が世子に聞こえるのではないかと気が気でなくて……。
ソウォンの顔は真っ赤になり、上げることが出来ずにいた。
剣術の稽古をしているとはいえ、男の人の力に敵う筈もない。
こんなところを誰かにでも見られたら、それこそ大変なことになる。
ソウォンはどうしたらいいのか、出そうにない答えを必死に探していた。
すると、