ムラオキテ
芽衣が萌莉に追いついた時、萌莉は既に靴を履き替えていた。


黒光っているローファーを床に打ち付け、コツコツと音を鳴らしている。


「ちょっと、芽衣。遅いよ~」


「なんだよ~うるさいなぁ。ちょっと待ってってば」


急ぎすぎて上履きが脱げ、萌莉の傍に落ちた。


「...ちょ、上履き飛んできたんだけど」


萌莉の顔が少しだけ険しくなったのを見て、芽衣は身体を固くした。


(あっやばい、今ので一気に機嫌悪くなってる)


芽衣は無言でローファーに履き替え、萌莉の側の上履きを靴箱へ放り込んだ。


「...ほら、帰ろ。素早い芽衣があたしより行動が遅いなんて。珍しいじゃん」


馬鹿にするように小突いてくる萌莉。


芽衣はその姿に安堵しつつ、会釈した。


「ちょっとね~考え事」


「ええぇ、ナニソレ!?もったいぶらないでよ~アハハ」


そういうと萌莉は、突然小走りをして、芽衣の少し前を歩きだした。



萌莉のミディアムヘアの髪の毛がフンワリと揺れると、ほのかにローズマリーの香りがした。



その香りを胸いっぱいに吸い込んでいると、突然萌莉が後ろを向いた。


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