青野君の犬になりたい
違う。私が言っている「好き」と青野君が口にしている「好き」は、圧倒的に温度が違う。
私が誰かと付き合う「好き」の温度はとても高くて、
とても何人もの人に同時に発せられない高い熱なのに。
それを伝えようと、私はもう一度挑戦する。
「言いかえる。好きだけど、恋してないってことよね」
笑顔が不意を衝かれたような、もしくは意味がわからないといったような表情に変わった。
青野君は私を真っ直ぐ見つめてから首を傾げ、「恋かあ」と、
まるで懐かしいものを思い出すかのように言ってビールを飲んだ。
そしてジョッキをテーブルに戻すと、恋はしてないのかなあと他人事のようにつぶやいて、
私の方に向き直る。
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