青野君の犬になりたい
そこでもう終わりにすればいいのに、彼はその話をもう少し酒の肴にしたかったらしい。
「あー、もしかしてお前、詩織から愛の便りをひとり悶々と待ってたりするわけ?」
そう言ってギャハハと笑った。
他にいくつかのキャハハが重なった。
私は笑えなかったし、青野君も笑っていなかった。
六本木で見かけた詩織さんと青野君の幸せな姿を思い出す。。
青野君の心の隙間を埋める最後のピース―――詩織さん――が埋まったのだ。
彼女とはまだ仲良く付き合っているよ、となぜ言い返さないのだろうと思ったとき、さらに笑えない冗談が続いた。
「あーそういえば七海さんてなんとなく詩織に似てねえ? ダメだよ、七海さんは俺が狙ってるんだからさあ」

「葉山さんて彼女に似てるね。だから?」
紗子さんが不快そうに放った言葉が甦った。

私が詩織さんと似ている?
だから? だから青野君は私に優しくしてくれてたの?
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