青野君の犬になりたい
「僕も。友達に拝み倒されて来たけど、まさか会うとはね」
やっぱり来なきゃよかったと後悔している。
私も、そして青野君も。
たくさんの人が笑いながら、騒ぎながら、話しながら、私たちの横を通りすぎていく。
道の左右に並ぶお店はどこも賑わっているようでいろんなドアから人が出入りし、その隙に週末に盛り上がる楽しげな声が漏れ聞こえる。

「青野君――」
「あのさ」

ふたりの声が重なった。
「なに?」と青野君がたずねる。
「詩織さんて青野君の1番目の彼女、一番大事な女(ひと)よね?」
少しだけ考えてから青野君は「うん、そうだね」と静かに答えた。
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