青野君の犬になりたい
「そっか」
ぷつん、と何かが切れた―――
青野君と自分をつないでいたなにか、
好きなだけでいいのだという想い、
たとえ何番目でも青野君の彼女としてそばにいたいという気持ち―――
そんなすべてがこらえきれずに切れてしまった。

「でも―――」と、青野君が言い、「ねえ」という私の声とまた重なった。
今度は「なに?」と聞かれる前に私は言葉を続けた。
「4番目の彼女の七海も2番目の犬のナナも捨ててくれないかな」
「え?」
青野君が心底驚いた顔をした。
そしてここまでつないでいた手をほどいた。
私はお誕生日に青野君からもらって、それからずっとつけていたネックレスを首から外し、青野君の手に無理やり返した。
青野君は自分の手に押し付けられたネックレスを見てぽつりと言った。
「捨てても無駄だって言ったよね? 絶対戻ってくるからって」
「だから……だから、もう2度と戻れないくらい遠い場所に捨てちゃってよ!」
私の声が大きく響いたのか、後ろから歩いてきたカップルが私たちをじろじろと眺めながら腕を組んで通り過ぎていく。
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