青野君の犬になりたい
青野君は私をソファに連れ戻し、自分の隣に座らせると詩織さんとのことを語り始めた。


詩織と出会ったのは6歳のときだった。
両親に連れられて動物園に行くと、像の柵の前で叔母さんと詩織が手をつないで立っていた。
「草汰、詩織ちゃんだ。お前より2つ下だから優しくしてあげるんだぞ」
突然そんな風に紹介された。
子どもだったからお父さんの知り合いなんだろうと深くは考えずに「こんにちは」って挨拶したのを覚えてる。
詩織は恥ずかしがって叔母さんの背中に隠れちゃったけど。
詩織にはお父さんがいなくてお母さんも早くに亡くなったから、お母さんの妹の叔母さんと2人暮らしだった。
詩織が暮らすマンションとうちは近かったから、小学校も中学校も一緒に通い、僕は妹が出来たみたいで嬉かった。
幼馴染みとしてずっと仲がよくて、中学生の時には好きだなって思うようになって、それが高校生になると淡い恋心に変わった。
ずっと近くにいて一番身近な女の子だったから、自然に好きになったって感じかな。
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