青野君の犬になりたい
「いつ知ったんだ? 僕たちが兄妹だっていうこと」
「最初から」
「最初から? 最初って――」
「あの動物園で会ったときから。お父さんが『詩織にはお兄ちゃんがいるんだぞ。今度会いに行こうな』っていつも言っていたから。私、お兄ちゃんに会える日をずっと楽しみにしていたの。だから動物園に行く前日は嬉しくて眠れなかったのよ」
僕は14年前のあの日を思い起した。
叔母さんの背中からそっと顔をのぞかせはにかんでいた少女。
あの時から詩織は僕をずっと兄貴だと思っていたわけで、つまり僕だけがバカみたいに詩織に対してやきもきしていたわけだ。
それから僕たちはまた一緒にいるようになった。
仲のいい兄妹としてね。
僕は母に言われた通り、兄貴として詩織をそばで見守っていこうって決めたんだ。
でもそんな僕たちの事情を誰も知らないから、みんなは詩織と僕は恋人同士だと思っていたけどね。
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