青野君の犬になりたい
「そういうこと」
「ねえ」
私はずっと胸にひっかかっていたことを尋ねた。
「私は詩織さんに似ているの?」
「似ていない。ただ―――」
「ただ?」
「その口元のホクロ、詩織にも同じ場所にあるんだ。似ているのはそれだけ」
青野君が指を伸ばし、私の唇の右上をそっと撫でた。
肌を滑る指の感触に頬を熱くしながら、好きな人が兄だったり妹だったりする切なさを想像してみた。
胸がしめつけられて苦しくなった。
「青野君と詩織さん、お互い想いあっていたのにつらいね」
青野君はなぜか首を振りながら苦笑に近い笑みを浮かべた。
「詩織から連絡がきたんだ」
まず最初に手紙が、そしてそれが届いた後で電話が。
青野君に心の準備をしてもらうために二段構えにしたそうだ。
詩織は僕の何倍もたくましいと、今度は本当に苦笑いした。
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