青野君の犬になりたい
「読んでみて」
青野君から渡された詩織さんのポストカードを開く。
『いきなりですが、私、結婚することにしました。叔母さんとお父さん、そしてお母さんにももうお許しを頂いています。近々日本に戻って直接報告するので、どうぞ祝福してください』
几帳面できれいな文字から目を離し、青野君を見た。
「青野君、大丈夫? ここ、痛くない?」
私は自分の胸を指で叩いた。
「痛いよ。七海さんが逃げちゃったあの日からずっと痛い」
青野君はポケットからシルバーのネックレスを取り出して、目の前で揺らした。
あの日、一方的に返したネックレス。
「だって……」
「詩織が結婚準備のために日本に戻ってきてたんだ。彼女がアメリカに帰ったら七海さんにすべて話してちゃんと告白しようと思ってた。どこにも行かないっていう言葉を信じて油断してたらあっさり逃げちゃってさ」
たっぷり皮肉が込められている。
「ごめんなさい……」
「『でも、絶対に連れ戻すから』っていう僕の言葉も聞かずに走って行っちゃって」
あ、そういえば……。
私は目の前で揺れるネックレスを手に取った。
「もう一度、付けてくれるかな。僕のところに帰ってきてくれる?」
照れくさくて「ワン」と答えた。
頷いた拍子に水滴がぽろぽろと頬に落ちる。
「犬じゃなくて、彼女として。七海さん、大好きだよ」
唇が重なる。息が詰まるほどの長いキス。
青野君の腕に、大好きだという言葉に抱かれ、体も心もほろほろにとけていきそうだった。
青野君から渡された詩織さんのポストカードを開く。
『いきなりですが、私、結婚することにしました。叔母さんとお父さん、そしてお母さんにももうお許しを頂いています。近々日本に戻って直接報告するので、どうぞ祝福してください』
几帳面できれいな文字から目を離し、青野君を見た。
「青野君、大丈夫? ここ、痛くない?」
私は自分の胸を指で叩いた。
「痛いよ。七海さんが逃げちゃったあの日からずっと痛い」
青野君はポケットからシルバーのネックレスを取り出して、目の前で揺らした。
あの日、一方的に返したネックレス。
「だって……」
「詩織が結婚準備のために日本に戻ってきてたんだ。彼女がアメリカに帰ったら七海さんにすべて話してちゃんと告白しようと思ってた。どこにも行かないっていう言葉を信じて油断してたらあっさり逃げちゃってさ」
たっぷり皮肉が込められている。
「ごめんなさい……」
「『でも、絶対に連れ戻すから』っていう僕の言葉も聞かずに走って行っちゃって」
あ、そういえば……。
私は目の前で揺れるネックレスを手に取った。
「もう一度、付けてくれるかな。僕のところに帰ってきてくれる?」
照れくさくて「ワン」と答えた。
頷いた拍子に水滴がぽろぽろと頬に落ちる。
「犬じゃなくて、彼女として。七海さん、大好きだよ」
唇が重なる。息が詰まるほどの長いキス。
青野君の腕に、大好きだという言葉に抱かれ、体も心もほろほろにとけていきそうだった。