青野君の犬になりたい
唇が解放され、ぼぉっとしている私に青野君は笑いかけ、
何事もなかったように近くを通った店員さんにビールのお代わりを頼んだ。
青野君はいつの間にか分厚いフレームの眼鏡をはずしている。
「え、ええええーー!」
怪訝な顔でこちらに顔を向け、顔にかかる髪をかきあげた青野君の顔を見て、
再び「えーーー!」と声を上げてしまった。
「どうしました?」
なんで? どうして?
眼鏡を取っただけなのに、髪を撫でただけなのに、なんでこんなに顔変わる? 雰囲気変わる?
素で見る瞳はうっすら茶色く、すっと伸びた鼻ときれいに調和している。
眼鏡とぼさぼさの髪でカモフラージュされていたけど、こんなに整った顔だちの人だったのだと驚き、
今まで気づかなかったことにも驚く。
< 16 / 125 >

この作品をシェア

pagetop