青野君の犬になりたい
「いや……その……」
「あ、もしかしてメガネ取ったら予想外にカッコよかったとか思った?」
冗談のように言うけど、冗談ではなく図星だったので、返事はせずにただ小さく頷いた。
「葉山さんて本当にわかりやすいね」
「そのメガネ」
「ああ、これダテ」
「どうしてわざわざ」
そんなダサい眼鏡を、と危うく言いかけなんとかこらえた。
「2番目の彼女にメガネが似合うって言われたから」
「そうなんだ」
その彼女のセンスがわからなかったのと、
彼女に言われてそんなダサい眼鏡をかけているのだということに小さな嫉妬を感じた。
「なんてね、噓」
「嘘?」
「素のままだとモテすぎちゃうから。もう彼女いらないし。
それなのにまた彼女増やすなんて、想定外だったな」
さっきは5人目も作るかもしれないと言っていたくせにとも思ってみるが、
自分から好きになった女は別ということだろうか。
もう何が本当で、どこまで本気なのかわからなくなってきた。
思わずまたため息をつくと、「ため息つかせる男と付き合いたいなんてバカだなあ」
と、青野君はテーブルの上に乗せた私の手に手を重ねてギュッと握った。

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