青野君の犬になりたい
「それ、のろけてるわけ?」
英子が睨んでくる。
のろけたわけではない。のろける要素なんて今のところなにもないではないか。
でも青野君に挨拶のようにキスされたことまでしゃべってしまったのは失敗だった。
「脳に糖分が必要だわ」
英子はウエイターを呼ぶと、ショートケーキとコーヒーのお替りを頼みかけ、
「やっぱり赤ワインとチョコレートにするわ」とオーダーを変えた。
私は白ワインとチーズを頼む。
「でさ、どうしたいわけ? 別に4番目の彼女になるのはあんたの勝手だけどそれでいいわけ?」
「いいわけ?」と聞きながら、厳しい口調は「いいわけないよね?」と諭されている。
「いや……」
「どうしたいのよ?」
「青野君の唯一の彼女になりたい」
「どうやって?」
「わからない」
そんなことわかっているなら、こんなにもやもやしてないよ。
はぁーと、英子が吹き出しに出るような大きなため息をつき、心底「呆れた」と目だけで伝えてきた。
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