青野君の犬になりたい
「人の好さだけが取り柄って、ひどいわね。もうちょっとなんかあるでしょ」
「実年齢より若く見えるとか? 化粧が薄いとか? 型までの髪がさらさらしているとか?
とか、とか、とか、とか、とか?」
はあ、と気持ちが抜けていく。
「確かに大した取柄はないわね」
「冗談よ。七海は抜けているとこもあるけど素直で優しいし、
その小動物をほうふつとさせる愛くるしい顔立ちも私は好きだわ」
「なんか全然自信につながらないけど、ありがとう」

恋の戦略なんてまるで中学生のようだ。
でも恋に関してはきっといくつになっても相手の心を得るために、
戦略とか駆け引きを企てるのだろうなと、まるで他人事のように考える。
恋する気持ちに子供も大人もないのだ―――。
「とりあえず」
英子の声で我に返る。

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