青野君の犬になりたい
1時間もしないうちにぴろーんと着信音がなった。
スマホに浮き上がる「青野君」という表示を見ただけで、みぞおちがきゅっとしまり、緊張する。
断られるんじゃないかという不安ですぐには開けなかった。
10分ほどスマホをテーブルの上に放置する。
そして「別に断られたっていいじゃない」と自分に言い聞かせてメールを開く。
『いいよ。どこに行く?』
気抜けするほど力み感ゼロの返信メール。
ホッとして、『東京タワー』と打って送る。
スカイツリーができてから急激に影が薄くなってしまったが、
近代的なスカイツリーよりも赤くてモダンレトロな感じの東京タワーの方が気に入っていて、
青野君と一緒に展望台に上ってみたいとふと思ったからだ。
ぴろ~んと着信音が鳴り、今度はすぐに開く。
『いいよ』
たったそれだけ。そんな3文字の返事に私の胸はトクトク鳴った。
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