青野君の犬になりたい
ハアと大きく吸って吐き、すぐに青野君に電話をかけた。
「もしもし」という穏やかな声が届き、胸がつまる。

「ごめんなさい」

自分から誘っておいて勝手で申し訳ないけど、急に犬の譲渡会の手伝いをすることになって、
明日は会えなくなったと謝ると、「犬の譲渡会?」と予想外の弾んだ声が返ってきた。
「うん。私、犬の里親の会でボランティアをしてるの。
明日、急に譲渡会できる会場がみつかったみたいで。
どうしても人手が足りないからって手伝いを頼まれたの」
「里親の会のボランティアかあ」
明日の予定をドタキャンしたことよりも青野君は里親の会にフックしているので、
ダメもとで聞いてみた。
「ねえ、誰かワゴン車とか貸してくれる人、いないかしら?」
「もしかして犬を車でつれていくための?」
「よくわかるね。いつも犬たちを会場に運んでくれる人が、旅行中でいないみたいで。
車さえあれば私が連れていってもいいんだけど。
まあ、でもそんなに都合よくワゴン車貸してくれる人なんて―――」
「いる。僕、あてある。またすぐ連絡するよ」
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