青野君の犬になりたい
施設で犬をおろし、2人だけになったバンの中は急にがらんとした。
「さっきまで犬に囲まれていたのに、寂しくなったね」
しみじみとした声を出し、青野君はバックミラーでさっきまでケージが積まれていた後部座席をのぞく。
「彼女、こんな大きな車、運転してるなんてすごいわね」
聞きたくはないのに、つい彼女について話を振ってしまう。
「いつもじゃないけどね。普段は普通の乗用車だよ」
“いつも”という言葉に青野君と彼女との親密さを嗅ぎ取り、
普段は乗用車でデートしているわけだ、と勘繰る。
「その彼女とはどんなところに行くの?」
聞かなくてもいい質問は止まらない。
「そんなに気になる?」
少し渋滞し始めたのか、車の速度が落ちて青野君が私の顔をうかがう。
「そりゃあ、青野君の3番目の彼女の車に乗せてもらってるんだもの。気になるわよ」
車がすぐにまた流れ出した。青野君はそれには何も答えず、アクセルを少し踏み込んだ。
日も暮れてきて、おなかも空いてきた。
今日は初デートの予定だったわけだから、これから食事をするものだと勝手に考えていた。
だから「葉山さんち、環八入ってどこで曲がるんだっけ?」と聞かれたときにはがっかりした。
「さっきまで犬に囲まれていたのに、寂しくなったね」
しみじみとした声を出し、青野君はバックミラーでさっきまでケージが積まれていた後部座席をのぞく。
「彼女、こんな大きな車、運転してるなんてすごいわね」
聞きたくはないのに、つい彼女について話を振ってしまう。
「いつもじゃないけどね。普段は普通の乗用車だよ」
“いつも”という言葉に青野君と彼女との親密さを嗅ぎ取り、
普段は乗用車でデートしているわけだ、と勘繰る。
「その彼女とはどんなところに行くの?」
聞かなくてもいい質問は止まらない。
「そんなに気になる?」
少し渋滞し始めたのか、車の速度が落ちて青野君が私の顔をうかがう。
「そりゃあ、青野君の3番目の彼女の車に乗せてもらってるんだもの。気になるわよ」
車がすぐにまた流れ出した。青野君はそれには何も答えず、アクセルを少し踏み込んだ。
日も暮れてきて、おなかも空いてきた。
今日は初デートの予定だったわけだから、これから食事をするものだと勝手に考えていた。
だから「葉山さんち、環八入ってどこで曲がるんだっけ?」と聞かれたときにはがっかりした。