青野君の犬になりたい
青野君は一瞬驚いた顔をして、咀嚼していた焼鳥をぐっとのみ込んだ。
そして「いい」と答えた。
「いい? それはつきあってもいいっていう意味?」
「ううん、別につきあわなくていい、っていう意味」
今度は表情も変えずにそう答え、枝豆のさやを指でつまんで器用に口の中に放り込んだ。
なに、この軽さは?
「このパン食べる?」
「うーん、別にいい、いらない」っていうトーンと一緒ではないか。
こんなんで「あ、そう」と話を終えるわけにはいかなかった。
「私のこと、好きじゃない?」
アルコールが力をくれる。聞きづらいこともずけずけ聞ける。
「うーん、付き合う必要性は感じないというか……」
必要性を感じない? 
生まれて初めて自分から付き合ってくれとお願いし、
その答えが「付き合う必要性を感じない」って、そんな殺伐とした断られ方って……。
悲しいという以上に、勢いで告白したことが恥ずかしくなった。
ジョッキを持ち上げグイッと飲み干す。
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