青野君の犬になりたい
「はい?」
ぶちと茶太郎は顔をくっつけあって、しつこく草の匂いを吟味している。
「葉山さんも青野君が好きなの?」
のどかな風景に弛緩していた気持ちに突然ひゅっと矢が投げ込まれた。
「え?」
話題が唐突に変わったので対応する余裕もなく、本音がそのまま顔に出た。
「あー、やっぱりそっかあ。じゃあ私、一応彼女だから、恋敵になっちゃう?」
無邪気な笑みの中に、ちらりと強い光が見えた。
「え、いや、そんな……」
「でも青野君、私のほかにも彼女いるんだよ。あれ、驚かない? もしかして知ってた?」
あそこのメロンパン、凄く美味しいのよ、知ってた?というのと変わらない明るさで聞いてくる。
正直に話していいものかどうか一瞬迷ったものの、あけっぴろげな彼女に自分だけ嘘をつくのはフェアじゃない気がした。
「実は少し前に告白して、そのときに聞きました。私がしつこく付き合ってほしいとお願いしたら『4人目でよければ』って言われて(犬になったことはさすがに言えなかった。ていうか、私の存在ってなんだろう)。あの、気になりませんか? 他の彼女のこと。嫉妬とか感じたりしませんか?」
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