青野君の犬になりたい
もうひとりの彼女ってどんな人なのだろう……あれ、もうひとり?
「もうひとりじゃなくて、もう2人じゃないですか? 2番目の彼女と1番目の人で」
ちょっと座ろうかと、カンナさんが5メートルほど先にあるベンチを指した。
私たちはペンキが所々はげている、水色の木のベンチに腰掛けた。
ブチと茶太郎は2頭そろって、「え?もう休むの?」みたいな恨めしげな目で私たちを見上げ、それでも物わかりよく足下で丸まった。
「私が思うに、1番目の彼女って実質的にはもういないんじゃないかなあ。彼の心の中に存在するだけで」
「え?」
何なの? そのミステリーじみたストーリーはとカンナさんの横顔を伺うと、彼女は前を見たまま「私が推測するに、それが青野君の隙間の理由じゃないかと思ってるんだけど」と、ますますミステリーなことを言った。
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