青野君の犬になりたい
「あの、どういうことですか?」
「つまり――」
カンナさんが振り向く。たっぷりためを作って勿体つける。
「つまり?」
「私の恋敵は葉山さんと2番目の彼女の2人ってわけ」
また目をクリンとさせて、大事な秘密を明かすかのように言う。
いえ、そこじゃなくて。
いえいえ、確かにその計算も重要だけど、でもそうじゃなくて、なんで1番目の彼女が実在しないのよ、ってことで。本気なのか冗談なのか、天然ずれしてるのか。
茶太郎とぶちは2頭並んでまったりしている。
さっきであったばかりなのに、長年連れ添っている熟年夫婦のようだ。
「だからどうして1番目の彼女がいないんですか?」
「あ、そこ?」
そこ?って、普通そこでしょう。そこがこの話の鍵でしょう。本気の天然ずれらしい。
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