青野君の犬になりたい
「そこです。肝心なのは、そこ」
カンナさんがにやっと笑った。そしてまた、じらすようにためを作る。
「聞きたい?」
「聞きたいです。そこ、重要です」
「そっかあ。そんなに聞きたいなら、今日は教えてあげない」
「はあ?」
構文的に『そんなに聞きたいなら“教えてあげる”』が正解だろう。
けれど呆気にとられる私にお構いなくカンナさんはすっと立ち上がり、「じゃ、そろそろ行こっか」」とブチのリードを引いて歩き出すので私も茶太郎を連れて後ろを追った。
1番目の彼女のことが頭の中で濃いもやとなって広がる。
それなのにそんな話を中途半端に教えてくれたカンナさんは「それよりさあ」と長閑に話を移す。
「2番目の彼女には気を付けて。ルックスは愛らしいけどチョーアクだから」
「チョーアク? チョーアクって超悪いから超悪?」
「超アクティブ。押しが強いっていうか攻撃的っていうか、いやな感じ? 私は負けないけどあなた優しそうだから用心してね」

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