青野君の犬になりたい
譲渡会の3日後の午後、私と青野君は東京タワー正面エントランスで待ち合わせをした。
前回行き損ねたのでリベンジだ。
「連休だから混んでいるね」と話しかけた声が「草汰くーん」という高い声にかき消された。
2人して周囲を見渡すと、ふんわりとしたニットにやはりふんわりとしたスカートをはいた可愛らしい人が手を振りながら駆け寄ってきた。
顎のあたりで緩くうちまきになった髪が揺れている。
「紗子、なんでここにいるの?」
「だって草汰君、昨日『明日は東京タワーに行く』って言ってたじゃない? 私も久しぶりに展望台に上りたくなって来てみたら偶然草汰君を見つけたってわけ」
< 70 / 125 >

この作品をシェア

pagetop