青野君の犬になりたい

偶然？　で、もしやこの人が？と、彼女の顔をまじまじと見たところで「彼女は菊池紗子」、「彼女は葉山七海さん」と、青野君が私たち双方を紹介した。
「彼女の紗子です。ねえ、なんで私だけ“さん”付けじゃないのよぉ。扱いが雑じゃない？」と、可愛く青野君に絡む。
「今さら“さん”とかいらないでしょ。じゃ」と、青野君が私の腕を引いて立ち去ろうとしたと同時に「ねえ、あなた新人？」と、声をかけられた。
新人？　一瞬、何のことかわからなくて彼女の顔を見つめると、今度は青野君に向かって「まさかまた新しい彼女？　でも葉山さんて彼女に似てるね。だから？」と訊ねた。
ああ、新人とは新人彼女ということか。
でも彼女に似ている。だから？　って、どういうことだろう。
紗子さんは笑みを浮かべていたが、その目はまったく笑っていなかった。
そしてそれを受ける青野君の瞳はとても冷ややかだった。