青野君の犬になりたい
そう、私に聞くより直接課長に聞くべきだ。
それでも彼女は「午前中かあ」と、不満げな声を漏らしたまま、動かない。
エクステで長く伸ばしたまつげで埋もれそうな瞳を私に向ける。
仕方なく「午後でも大丈夫かもしれないけど、課長の予定を聞いてみた方がいいですよ」と、また同アドバイスを投げた。
「午後はずっと外出みたいなの」
なんだ、ちゃんと予定を聞いているんじゃないの。
「でね、今日は早く帰らないといけないの。半分くらいは終わってるんだけど」
ようやく彼女の意図が伝わった。
彼女の粘り着くような眼力に押されて「じゃあ私、やっておきますからデータ送ってください」と言ってしまう。
「本当? ありがとう! 助かっちゃう」
ミキさんはすぐに自分の席に戻っていった。
そしてすでに準備していたように1分後にはデータが届き、その直後「お先に失礼しまーす」と甘い香りを振りまき、オフィスを出て行った。
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