青野君の犬になりたい
ソファとキッチンの中間に置かれた、大きな木のダイニングテーブルに歩いていく。
すでにテーブルの上にはたくさんの食べ物が準備されていて、サラダに数種類のチーズにスモークサーモンにオリーブにブルスケッタにローストビーフが並んでいた。
思わず「白ワインでお願いします」とリクエストする。
カンナさんはワインクーラーごとワインを運んできて、薄いクリスタルのワイングラスにワインを注いでから席に着き、それじゃあ「お誕生おめでとう」とグラスを持ち上げた。

「それで青野君とは結局連絡がとれないまま?」
「それがさあ」
ワイングラスから形のよい唇を離し、カンナさんが苦々しく笑う。
「あれからムキになってしつこく電話をかけたのよ。で、やっとつながった思ったら電話に出たのは彼女だったの」
「え、いくらなんでも他人の電話に出る?」
「でしょう?」
「で、切ったの?」
「切らないわよ。青野君に電話したんだもの」
私だったら驚いてとっさに切ってしまうだろうけど、確かに青野君のスマホに電話を掛けたわけだから切る必要はない。
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