青野君の犬になりたい
「青野君て、飛び抜けてかっこいいわけでもないのになんでこんなにモテるのかなあ? 」
「自分だって好きになったくせに」
カンナさんが笑いながらブルスケッタを口に運ぶ。
「私は同じ会社で働いていて、青野君、親切だから。近くに優しい人がいたら好きになるじゃない」
「それだけ?」
それだけではない。
それだけではないはずだけど、突然恋に落ちた理由は正直自分でもはっきり説明できない。
私は首を振る。
「でもどうして急に好きになっちゃったのかはわからない」
えー、わからないのー?と大げさに目を見開いた後、「私もよくわからないけど」とカンナさんは首をすくめた。
「なんだろう。優しさと素っ気なさが混在していて、癒し系みたいで実はクールだったり。つまりよくわからないところが魅力でセクシーなんじゃない? ルックスだって顔も体も控えめにすっきりしてて、どこもさりげなく整ってるし。私、ときどきカッコいいなあって見とれちゃうもん」
私は青野君の子どものような無邪気な笑みや、冷めた瞳や急に顎を引き寄せる長い指を思い浮かべる。
表情がくるくる変わるのではなくて、雰囲気がかわる。
今ではどの青野君にもドキドキする。
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