青野君の犬になりたい
「どうして?」
「まだ青野君と付き合う前、ブチを連れて散歩してたら青野君に会ったのよ。彼女もいっしょだったの。私と青野君は顔見知りだったから近づいて挨拶したの。ブチも青野君見て喜んでさ。そしたら彼女、ブチを見て『いやだこの犬、雑種でしょ。汚らしくて不細工ね』とか言うのよ。あんたの方がよっぽど不細工だっつーの」
綺麗な顔で言われると迫力がある。ごめんなさいと思わず謝りそうになる。
「て、まさか言い返したの?」
カンナさんはワインをぐぃっと飲んだ。
「ううん。私が言い返す前に青野君が言い返してくれた」
「なんて?」
「可愛いよ。ブチは僕や君の100倍くらい可愛いって」
そんな風に言ってもらえるブチが羨ましい。
「彼女の反応は?」
「ひきつってた。ひどいじゃない!ってかなり怒ってた」
にんまりしたカンナさんを見て、私も笑った。
淡々とブチをほめる青野君の様子がはっきりと想像できて愉快だった。
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