青野君の犬になりたい
「いいね、青野君」と、私が称えると、
「いいよ、すごくいい」と、カンナさんが同意する。
私たちはどちらともなくグラスを合わせた。
クリスタルの透明な音が心地良く天井に広がっていく。
「でも彼女も犬に嫌な思い出とかあって、怖いだけなのかもよ」
「怖いならわかるわよ。でも汚くて不細工だなんて許さない。オウムみたいな顔しちゃってさ」
「そのたとえもオウムに失礼だと思うけど」
オウムみたいな顔ならば愛くるしいのではないか、と私は考える。
するとまるで私の考えを見透かしたように「化粧がカラフルだって意味よ。オウムみたいに可愛くはないわ」と反論した。
カンナさんが彼女のことをえらく嫌っているということはわかった。
でも肝心のことを聞いていない。
青野君の中でもっとも大事なポジションにいるはずの人のこと。

「それで、青野君の一番の彼女は?」
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