青野君の犬になりたい

以前カンナさんは、「1番目の彼女って実質的にはもういないんじゃないか」なんて不可解なことを言った。
いったいどういう意味なのだろう。
単純に付き合いを解消したということなのか、ふられちゃったのか、その人がこの世から去ってしまったのか……と、不吉なことまで考えて頭を振った。
どんな理由にせよ彼女の存在がわからないと、青野君のこともぜんぜん理解していない気がする。

「あれ？　話さなかったっけ？」
「彼女はもういないと思う、っていう意味深な推理だけ。そっから先はもったいぶって教えてくれなかったじゃない」
非難の意を込めて言うと、カンナさんは首をすくめて「草汰の心の傷だからね」なんて深刻そうな言い訳をした。
「草汰と同じ大学の知り合いがたくさんいるから、実はあれからちょっと調べてみたの。草汰のこと誰か知っているんじゃないかと思って。そしたらね―――」

青野君と彼女のことを知っている人が、予想以上にたくさんいたそうだ。
その理由は青野君がイケメン御曹司だったからそうだ。
「御曹司？」