【短編】バレンタインのお返しに。
「結局、選ぶのは可愛いほうなんだ」
努力していないのはわかってるし、越川先輩にそう言われたとしても、返す言葉なんてない。
でも、越川先輩よりずっと近くにいたのは、わたしなんだよ。
瀬戸内先輩の細かなミスを見つけて、こっそり直しておいたのも、
体調悪そうだったら、早退を勧めて、代わりに仕事をやって、徹夜になったのも、
瀬戸内先輩のこぼす愚痴に、しっかりフォローを入れたのも、
お昼を忘れた先輩に、お腹空いてないと嘘をついて、早起きして作っているお弁当を、なに食わぬ顔で渡したのも、
誕生日を一番に祝っていたのも、
……全部わたしなのに。
それは、意図してやったことじゃないけど、瀬戸内先輩の気にも留めてもらえなかったこと。
わたしは初めから、“後輩”というレッテルのつけられた人間だった。
それ以上でも以下でもない、後輩。
「……っ…」