【短編】バレンタインのお返しに。


もっと可愛かったらよかった。


越川先輩のように、積極的で家庭的であればよかった。


もっと早く、───先輩のことが好きだって、気づいたらよかった。



「……先輩……っ」



どうやって家まで帰ったのか、まったく覚えていなかった。


ただ、覚えていたのは、ひしひしと後悔をして、ぐずぐずと泣いて帰ってきて。



気がつけば、瀬戸内先輩からのメッセージも電話も無視して、アパートの玄関を背にして室内でひとり、


部屋に行く気力すらなく、しゃがみ込んで、子どものように泣きじゃなくっていた。



たかが失恋で、どうしてここまで悲しくなるのか、真っ白な頭ではわからなかった。



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