【短編】バレンタインのお返しに。





昨日は出せなかった、失恋の方程式を解くことができたのは、いつもより1時間早く会社に来た頃だった。


係長すらもいない、ひとりぼっちの空間で、昨日はできなかった資料を整理していると、ふと答えが見つかった。



失恋だけで泣いてしまう理由。



それは、越川先輩と付き合い出したら、先輩とはもう、平気な顔してへらへらと顔を見合わせられないことが、わかっているからだ。


自然と失恋が決定して、やっと想いに気づいた頃には、そのひとがべつのひとのものだなんて、寂しい。



それが、ずっと憧れていて慕っていた先輩ともなれば、話はずっと奥深かったんだと思う。



はあ、と重い溜め息が漏れて、わたしはがっくり肩を落とした。



先輩が好き。


先輩は越川先輩が好き。


ふたりは両想い。


今日付き合うことになる。


< 13 / 30 >

この作品をシェア

pagetop