【短編】バレンタインのお返しに。
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昨日は出せなかった、失恋の方程式を解くことができたのは、いつもより1時間早く会社に来た頃だった。
係長すらもいない、ひとりぼっちの空間で、昨日はできなかった資料を整理していると、ふと答えが見つかった。
失恋だけで泣いてしまう理由。
それは、越川先輩と付き合い出したら、先輩とはもう、平気な顔してへらへらと顔を見合わせられないことが、わかっているからだ。
自然と失恋が決定して、やっと想いに気づいた頃には、そのひとがべつのひとのものだなんて、寂しい。
それが、ずっと憧れていて慕っていた先輩ともなれば、話はずっと奥深かったんだと思う。
はあ、と重い溜め息が漏れて、わたしはがっくり肩を落とした。
先輩が好き。
先輩は越川先輩が好き。
ふたりは両想い。
今日付き合うことになる。