【短編】バレンタインのお返しに。
「な、なんでもない、です……」
「ふうん……。今日は眼鏡なんだ?」
「ああ、はい」
昨日泣きはらして、目がぱんぱんに腫れてしまったから、朝は温タオルを当てたりしたんだけど、治らなくて。
だから、いつものコンタクトはやめて、誤魔化すために眼鏡にした。
「それも似合ってて可愛いけどさ。なんで今日は、髪降ろしてんの?」
「……え?」
「ほら、毎日違う髪型で来んじゃん。あれ、なにげ楽しみだったんだけど」
昔から、ヘアアレンジが得意で、わたしは社会人になった今でも、毎日髪型をネットで探して、それどおりにしてきているけど。
今日はそんな余裕なかった。
「……気づいてた、んですね」
「そりゃ気づくだろー。毎日頑張ってるなーって、感心してた」
ちょっと笑いながら、それでもいつもとは違う気遣いの色が感じられて。
昨日突然避け出したから、戸惑っていて、いつもは褒めないわたしを、無理して褒めているんだなとわかる。