【短編】バレンタインのお返しに。


「かーいとくんっ、おはよ!」


「……おはよう」


ぴょんっ、とでも効果音がつきそうな勢いで現れた越川先輩は、瀬戸内先輩の肩に手をついて、後ろから覗き込むようにして挨拶をした。



「今日は楽しみにしてるねっ」


「……? ああ」


「じゃあ、今日も1日頑張ろーね!」



わたしには目もくれず、さっさと自分の署へ戻っていく越川先輩を、瀬戸内先輩はぼーっと見ていた。


ああ、好きなんだな。



「あ、千。今日、仕事終わったら、一緒に帰ろ」


「……嫌です。越川先輩と約束あるんでしょう?」


「あるんだけど。お前にも話したいことあるからさ、待っててよ」



ね? とお願いをされたわたしは、小さく頷いて、それからすぐ後悔した。



きっと、これからは関わらないでほしいとか言われちゃうんだろう。それで、瀬戸内先輩との関係も、恋と同じく儚く散る。



瀬戸内先輩は、彼女第一なんですね。







───やっぱり瀬戸内先輩を待つのはやめて、早く帰っちゃおう。


そう決めたのは、今日は一段と越川先輩と話す瀬戸内先輩を見つけたからだ。


家についてから、適当な理由を見つけてメッセージを送っておけば、問題ないはずだし。



そもそも、好きなひとから拒否をされるって、辛すぎる。


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