【短編】バレンタインのお返しに。
定時の20時になり、瀬戸内先輩が緊張した面持ちで会議室へ行くのを見届けてから、わたしもこっそりと会社をあとにした。
てくてくと帰り道を歩いて、いつもより早足で着いたアパートは、なんだか寂しげな気がした。
家に入ってすぐ、先輩からメッセージが届いていることに気がついた。
【俺待ってて、って言ったよね?
今どこにいんの?】
きょろきょろと辺りを見回す先輩が、脳裏によぎって、悪いことしたかなと思いながら、下書きしておいたメッセージを、送った。
それにすぐ、既読がついて、【は?】と怒った内容が返ってきた。
【用事ってなに?
越川と付き合うことになったって、なんのこと言ってんの?】
それに返すこともなく、スマホの電源を落として、スーツを脱ぎ捨てた。