【短編】バレンタインのお返しに。
「───嘘ついて先に帰るなんて、ちょっと酷いんじゃねえ?」
「せっ、先輩!?」
開けたドアから、がつがつと入ってきた先輩は、ドアが閉まるなり、わたしを強くきつく、抱きしめてきた。
越川先輩をモノにしたくせに……っ、なんで……!
「なあ、お前ひとつ勘違いしてねーか」
「し、してません! いいから離してください!」
「離さねえよ」
そのまま、靴箱の側面にガンッ、と押し付けられ、顔をぐっと近づけてくる瀬戸内先輩。
その目は、強さのなかに孤独を滲み出ていて。
「俺が……越川と付き合ったって、なんなの」
「だ、だって……今日呼び出すってことは、好きって言うってこと、ですよね」
「はあ? ちげえし」