【短編】バレンタインのお返しに。
隠れファンと呼ばれるひとたちが、他の営業部にもいて、義理チョコよりも本命チョコのほうが多いくせに、毎年お返ししない先輩。
本人は気づいていないけど、彼を見る女のひとの目は、恋する乙女でしかないことを、いつになったら自覚してくれるんだろう。
新人社員としてここへ着て、今年の4月で6年目に突入するけど、瀬戸内先輩が恋をしているなんて、訊いたことがない。
クールで冷静、ミスもしないし、予想外のことにも冷静沈着に対応するその姿は、誰の前でも崩さない。
「……ホワイトデー、ねえ」
「なんですか、急に。今さら遅いですよー?」
「うるせぇ」