【短編】バレンタインのお返しに。
曖昧な返事をするときは決まって、なにか考えごとをしているときだ。5年も一緒にいたら、そろそろそういうものがわかってしまう。
頭が冴えるといいなと思いつつ、自販機まで歩いていく途中で、休憩の中から、高い声が響いてきた。
「でもさあ、ぶっちゃけ海斗くんって、後輩で手いっぱいじゃない?」
「あー、確かに! 南野(みなみの)とかいう奴っしょ?」
「あいつ、海斗くんに迷惑しかかけてないよね〜」
ギャハハッ、と汚らしい笑い声が耳をつんざいて、わたしは足早にそこを去った。
……考えてみたら、わたしはいつ瀬戸内先輩の役に立ったことがあったんだろう。
いつも、ありがとうございます、すみませんと言うのはわたしで、いいよって言ってくれるのは、先輩だ。
先輩がホワイトデーに参加しないのは、わたしで手いっぱいだから?
「……あ」