【短編】バレンタインのお返しに。
わたしの手の上に覆い被さる、先輩のごつごつと骨張った大きな手は、ブラックの隣にあるミルク入りのコーヒーのボタンを押した。
がこん、と出てきたコーヒーに引き続き、先輩がついでに買ったミルクティーまで出てきて。
ぼうっとしている間に、それを瀬戸内先輩がとって、わたしに渡してくる。
「あ、ありがとうございます……」
「いいよ。つーか、怒ったわけじゃねぇから、気にすんなよ」
「はい……すみません」
ほら、結局飲み物を買うこともままならない。
迷惑しかかけてないわたしが、越川先輩のことでさらに瀬戸内先輩を落ち込ませてる。
「あ、海斗くんっ」
「……おお、越川。どうした」
「いたから声かけただけー」
「なんだそれ」
えへへ、と可愛らしく笑った越川先輩と、ふはっと吹き出した瀬戸内先輩は、どこからどう見ても、仲睦まじい姿で。
なぜだかちくりと、胸が苦しくなった。