【短編】バレンタインのお返しに。
先輩のこと、心のなかで鈍感だと言っていたくせに、一番鈍かったのはわたしだった。
今さら越川先輩をうらやましいと思うなんて、どうかしてる。
だってわたしは彼に、瀬戸内先輩になにもしてあげてないし、いつも迷惑しかかけていないのに、
努力をしてきた越川先輩を羨むなんて……まして、恨むなんてしちゃいけないこと。
わかってる、わかってるのに。
「おーい、千(せん)」
「……ごめんなさい、用事あるからお先に失礼します」
「……千?」
どうしても、先輩を避けてしまう。